資産除去債務とは

資産除去債務について解説します。

目次

資産除去債務とは

資産除去債務とは「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの」とされています(資産除去債務に関する会計基準3.(1))。

会計基準に記載されている定義のため難しく聞こえますが、簡単に言うと、固定資産を除去する時に発生する義務ということです。

資産除去債務は負債

資産除去債務は「有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上する」とされています(資産除去債務に関する会計基準4)。

要は資産除去債務を貸借対照表の負債として計上する必要があるということですが、なぜ計上するかというと、通常、資産除去債務によりコストが発生するからです

負債として計上する資産除去債務は「割引前の将来キャッシュ・フローを見積もり、割引後の金額(割引価値)で算定する」とされています(同6)。

割引価値については「貨幣の時間価値とは」をご覧ください。

資産除去債務の具体例

固定資産の除去時に発生する義務と言うと非常に幅広いですが、いくつか具体例を挙げてみます。

・賃貸物件の原状回復のためのコスト
・土地の有害物質の除去のためのコスト
・エアコンの廃棄時のリサイクル料金

これらは、固定資産を除去する時に発生する義務であるため、資産除去債務に該当します。

資産除去債務の会計処理

資産除去債務の会計処理を設例で解説します。

(例)当社は期首に賃貸物件である本社建物で間仕切り工事を行った。工事費用は1,000,000円であり、原状回復のための費用は100,000円と見積もっている。賃貸借契約の終了は10年後であり、割引率は1.0%とする。
なお、10年後の実際の原状回復のための費用は110,000円であった。

資産除去債務計上時
建物1,090,528現金預金1,000,000
資産除去債務90,528 (*1)
決算時(時の経過による資産除去債務の増加を計上)
利息費用905資産除去債務905 (*2)
決算時(減価償却費の計上)
減価償却費109,052 (*3)減価償却累計額109,052
賃貸借契約の終了
資産除去債務100,000現金預金110,000
履行差額10,000

(*1) 原状回復費用100,000円÷(1+割引率1.0%)¹⁰
(*2) 資産除去債務90,528×割引率1.0%
(*3) 建物取得価額1,090,528÷賃貸借契約期間10年(会計上の耐用年数)

(解説)

資産除去債務計上時

先述の通り、資産除去債務は「割引前の将来キャッシュ・フローを見積もり、割引後の金額」で算定します。

したがって、割引前の将来キャッシュ・フローである「原状回復費用100,000円」を「割引率1.0%」で割り引き、現在価値を算定します。
この設例では原状回復回復費用100,000円は10年後に発生するため、割引率1.0%で10回割り引きます。
また、負債として計上した資産除去債務と同額を資産(この設例では建物)に計上します。

決算時(時の経過による資産除去債務の増加を計上)

次に、決算時の仕訳ですが、「時の経過による資産除去債務の増加の計上」という言葉が出てきました。

これは、期首に90,528円であった資産除去債務は期首の現在価値であり、期末には期末の現在価値になっているため、その間の価値の変動を反映させる会計処理です。
この仕訳を毎決算時に計上することにより10年後の資産除去債務の金額は100,000円になります。
この現在価値の変動は「利息費用」利息費用という勘定科目で販管費に計上します。

決算時(減価償却費の計上)

もう1つの決算時の仕訳は減価償却費の計上ですが、資産計上された資産除去債務(この設例では建物のうち90,528円)は減価償却により費用化されることになります。

賃貸借契約の終了

最後に原状回復の仕訳です。毎決算の「時の経過による資産除去債務の増加の計上」により10年後の資産除去債務の額は100,00円になっています。
そして、負債として計上した資産除去債務の額と実際の原状回復費用の額との差額は「履行差額」という勘定科目で販管費に計上します。
この履行差額を特別損失に計上する誤りが見受けられますが、履行差額は見積もり差額であるため、巨額でない限り販管費に計上します。

■企業会計基準第 18 号 資産除去債務に関する会計基準
3.(1)「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。

■企業会計基準第 18 号 資産除去債務に関する会計基準
4.資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上する。

■企業会計基準第 18 号 資産除去債務に関する会計基準
6.資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。



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