会計の世界では「貨幣の時間価値」という概念が登場することがあります。
貨幣の時間価値とは何か?
今日は貨幣の時間価値について解説したいと思います。
貨幣の時間価値を知ることで会計や経営、さらには投資についての理解が深まります。
貨幣の価値
貨幣の経済的な価値は100円硬貨であれば100円、1,000円紙幣は1,000円、10,000円紙幣は10,000円です。
これはいつでもどこでも誰にとっても同じです。
10,000円をいつもらうか?
貨幣の時間価値に関する古典的な質問があります。
「10,000円をもらえることになりました。今もらうか1年後にもらうかどちらが得でしょうか?」
この問いに対しては「今すぐもらう」という方や「無駄遣いをしないように1年後にもらう」という方など、答えは人それぞれかもしれませんが、正しい答えは「今」とされています。
なぜかというと世の中には「利子」というものが存在するからです。
例えば、金利が1%の経済環境では、今もらった10,000円は1年後には10,100円になるため、今10,000円をもらう方が、1年後に10,000円をもらうより得ということです。
今の10,000円の方が、1年後の10,000円より価値が高いと言い換えることもできます。
会計の世界での使われ方
先ほどの質問で現在と将来とでは貨幣の価値が異なるということが分かりました。
会計の世界では、見積もりのために、将来の金額(将来キャッシュ・フロー)を現在の金額(現在価値)に置き換えることがよく行われ、これを「割り引き」や「割引計算」などと言います。
この割引計算は貨幣に時間価値があることが前提になっています。
割引計算の設例
割引計算ついて設例で解説します。
(例)A社は機械装置Bが今後5年間に生み出す将来キャッシュ・フローは今後4年は毎期100百万円、5年後は500百万円と予想している。割引率は1%とする。この機械装置Bの現在価値はいくらか。
(答)865百万円
(解説)
まず、1年後の将来キャッシュ・フロー100百万円の現在価値は100百万円÷1.01=99百万円です。
次に、2年後の将来キャッシュ・フロー100百万円の現在価値は100百万円÷1.01²=98百万円となります。
割引率の1%で2回割り引くことで、1年後の価値、現在の価値に順に割り引くというイメージです。
同じように3年後の将来キャッシュ・フロー100百万円の現在価値は100百万円÷1.01³=97百万円となります。
このように各年の将来キャッシュ・フローを割り引いたものの合計が機械装置Bの現在価値になります。
貨幣の時間価値を利用する会計基準
最後に貨幣の時間価値を利用する有名な会計基準をご紹介します。
・退職給付に関する会計基準
・資産除去債務に関する会計基準
・固定資産の減損に係る会計基準
退職給付に関する会計基準では退職給付債務の額の算定、資産除去債務に関する会計基準では資産除去債務の額の算定、固定資産の減損に係る会計基準では減損損失の測定において、将来キャッシュ・フローの現在価値への割り引きを行います。
そのため、退職給付や資産除去債務、減損の会計を理解する上で貨幣の時間価値について知っている必要があります。
具体的な内容については各会計基準の解説で改めてご紹介したいと思います。