株主総会の普通決議・特別決議・特殊決議・特別特殊決議とは要件により区分した株主総会の決議です。この記事では株主総会の普通決議・特別決議・特殊決議・特別特殊決議について解説します。
株主総会とは
株主総会とは、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる会社の最高意思決定機関です。
株主総会の決議要件と代表例
株主総会の普通決議・特別決議・特殊決議・特別特殊決議の要件は下記の通りです。出席要件は定足数とも、決議要件は表決数とも言われます。
| 出席要件(定足数) | 決議要件(表決数) | 備考 | |
| 普通決議 | 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 | 出席株主の議決権の過半数 | |
| 特別決議 | 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主の出席 | 出席株主の議決権の3分の2以上 | 定款で出席要件の引き下げ、決議要件の引き上げが可能 | 
| 特殊決議 | なし | ①議決権を行使することができる株主の半数以上 ②議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2以上  | 定款で決議要件の引き上げが可能 | 
| 特別特殊決議 | なし | ①総株主の半数以上 ②総株主の議決権の4分の3以上  | 定款で決議要件の引き上げが可能 | 
普通決議
株主総会の普通決議の代表例は「剰余金の配当に関する事項の決定」です。設例で解説します。
(例)A社(株式数100株・議決権数100個・株主数100人)の株主総会の決議事項は「剰余金の処分の件」である。
・50人が出席→株主総会不成立(出席要件を満たさない)
・51人が出席して25人が賛成→否決(決議要件を満たさない)
・51人が出席して26人が賛成→可決
特別決議
会社法では普通決議より要件を厳しくした特別決議が用意されています特別決議の代表例は「株式の併合」や「定款の変更」などがあります。一般的に「とっけつ」と言うと特別決議を指します。設例で解説します。
(例)A社(株式数100株・議決権数100個・株主数100人)の株主総会の決議事項は「株式併合の件」である。
・50人が出席→株主総会不成立(出席要件を満たさない)
・51人が出席して66人が賛成→否決(決議要件を満たさない)
・51人が出席して67人が賛成→可決
特殊決議
さらに要件が厳しい特殊決議があります。特殊決議の代表例は「全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更」などです。設例です。
(例)A社(株式数100株・議決権数100個・株主数100人)の株主総会の決議事項は「定款一部変更(全ての株式を譲渡制限株式とする定款変更)の件」である。
・51人が賛成→否決(決議要件を満たさない)
・67人が賛成→可決
特別特殊決議
最も要件が厳しいのが特別特殊決議です。特別特殊決議は「株主の権利について株主ごとに異なる取り扱いを行う旨の定款変更」で要求されます。
この定款変更は、剰余金の配当・残余財産の分配・株主総会における議決権について、株式の内容や数に応じてではなく、株主ごとに異なる取り扱いにする(人によって変える)ものであり、株主平等の原則の例外であるため、非常に厳しい要件が求められています。なお、この「株主の権利について株主ごとに異なる取り扱いを行う旨の定款変更」は非公開会社においてのみ認められています。設例です。
(例)A社(株式数100株・議決権数100個・株主数100人)の株主総会の決議事項は「定款一部変更(株主の権利について株主ごとに異なる取り扱いを行う旨の定款変更)の件」である。
・51人が賛成→否決(決議要件を満たさない)
・75人が賛成→可決
特別決議・特殊決議・特別特殊決議の順に要件が厳しくなっている理由は、これらで決議される事項は株主の利益を保護する必要性がより高いためです。なお、通常、特別決議・特殊決議・特別特殊決議が要求される議題は臨時株主総会が開催されます。
上場会社の場合
以上で解説したものは会社法の原則的な決議要件と議題の例です。会社法では決議要件を厳しくしたり、一部の決議について定款で定めることにより取締役会が決定することができるようになっています。
例えば上場会社では剰余金の配当を「取締役会で決定する」としている会社がありますが、詳しくは剰余金の配当の決議機関をご覧ください。

