月次売上の見方と注意点について解説します。
月次売上とは
月次売上とは小売業・飲食業などを経営する上場会社の月次の売上高に関する任意開示資料のことです。
月次売上概況・月次売上状況などと言われることもあり会社によって開示資料の名称は異なりますが、基本的な開示内容は同じです。
月次売上の開示内容
下の図は一番シンプルな月次売上の開示の例(3月決算の会社が9月の月次売上を開示した想定)です。
店舗売上の前年比で本業の売上の好不調を確かめることができます。
(単位:%) | ||||||
4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
全店 | 109.9 | 113.6 | 111.4 | 105.3 | 107.8 | 110.7 |
既存店 | 101.6 | 109.5 | 106.7 | 99.3 | 102.0 | 105.1 |
まず左側に全店と既存店という項目があります。
全店とは文字通り全店舗のことです。既存店とは明確に定義がある訳でありませんが開店後13か月を経過した店舗のことを指していることが多いです。
この例の場合、売上の前年同月比を開示しているため、9月は全店で売上が10.7%アップ、既存店では5.1%アップしたことが分かります。
会社によっては売上高や客数・客単価などが開示されている場合もあります。
月次売上の見方
①全店の基準は100%超
新規出店を継続している場合、全店の売上の前年比は100%超が基準となります。新規出店を継続しているのに100%を下回る場合は本業が不調であったり、店舗を閉鎖している可能性などがあります。
②既存店の基準は100%
既存店の売上の前年比は100%が基準となります。100%を下回る場合は本業が不調であったり、前年が良すぎた可能性などがあります。
限られた店舗面積で何年も連続して100%超を継続することは困難ですが、新商品や新サービスの提供などにより100%超を達成することが投資家からは期待されています。
月次売上を見る時の注意点
月次売上を見る時の注意点をご紹介します。
①監査対象外である
月次売上は任意開示資料であるため監査法人による監査は受けていません。そのため、稀に修正が入ることがあります。
②曜日効果
曜日効果とはその月の曜日の数による効果です。例えば同じ月でも年によって土日の数が違ったり、祝日の日取りで3連休があったりなかったりします。一部の小売業や飲食業では土日の方が売上が多いことがあり曜日効果による影響は無視できません。
③閏年効果
閏年効果とは閏年による2月の営業日の数による効果です。閏年の2月は29日あるため売上が伸びるのが通常です。1日あたりの売上が一定だと仮定するとたった1日の差で3.5%(29日÷28日)も売上が伸びるのです。
その他に8月や9月は台風による影響を受けやすいことにも注意が必要です。
特に曜日効果や閏年効果を知らず単純に数値だけ見て一喜一憂しないようにしましょう。