匿名組合をご存じでしょうか。偶然こちらの記事に辿りついた方は見当もつかないかもしれませんが、言葉は知っているけどイマイチよく分からないという方も多いと思います。今回はそんな匿名組合について解説します。
匿名組合とは
匿名組合は商法上の概念であり、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、営業から生ずる利益を分配することを約することによって、効力を生じた匿名組合契約に係る団体のことです(商法565条)。
匿名組合契約の当事者には「営業者」と「匿名組合員」が登場します。営業者とは業務を執行する者、匿名組合員とは出資をする者のことです。
匿名組合員は配当と出資の返還により投下資本を回収することができ、近年は太陽光発電ファンドのために匿名組合が活発に利用されています。
匿名とは
匿名組合の匿名とはどういうことでしょうか。
商法では、匿名組合員は「営業者の業務を執行し、又は営業者を代表すること」、「営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有すること」ができないとされています(商法536条3項、4項)。
つまり、原則として出資者が表に出ることがないため、匿名組合と呼ばれています。
匿名という日本語の語感から得体の知れないイメージを持たれがちですが、出資者の匿名性が担保されているということです。
匿名組合の特徴
匿名組合の特徴を紹介します。
メリット
●匿名性が担保されている
先述の通り、出資者の匿名性が担保されています。匿名性を確保したいプロジェクトで利用することが考えられます。
●経営に関与する必要がない
匿名組合員は経営に関与する必要がありません。
●二重課税が排除されている
匿名組合の配当は営業者側で損金・必要経費にされるため、株式会社の配当のような二重課税が発生することはありません(法人税法基本通達14-1-3、所得税法基本通達36・37共-21の2)。
●匿名組合の損益が直ちに反映される
法人が匿名組合員である場合は匿名組合の利益または損失が税務上も益金または損金とされます(法人税法基本通達14-1-3)。この特徴により、レバレッジドリースなどの節税(厳密には課税繰り延べ)商品に匿名組合が利用されています。
デメリット
●経営に関与できない
メリットの逆のことを言っているだけですが、匿名組合員は経営に関与することができません。
●投下資本の回収に時間がかかる
出資は株式のように簡単に市場で売却することはできないため、投下資本の回収に時間がかかると言えます。
匿名組合を使ったスキームの実例
ここからは匿名組合を使った実例として太陽光発電ファンドのスキームをご紹介します。
まず、匿名組合員が営業者と匿名組合契約を締結してファンドに出資します。営業者はその資金により太陽光発電事業を行い、売電などにより、利益獲得を目指します。そして、利益を獲得した場合には、匿名組合員に配当を行います。
基本的なスキームはほとんどのファンドで同じです。
なお、広い意味での太陽光発電ファンドの中には太陽光発電の開発・売却を事業の目的とするものも含まれています。
太陽光発電に対する投資を売電により回収するか、太陽光発電所の開発・売却により回収するかの違いです。